ここ数年、漫画を読んでいて「女性」を意識することが増えたな、と思いました。
『鋼の錬金術師』などの作者、荒川弘先生をはじめ、女性漫画家さんの作品を「少女漫画以外で」よく見かけるようになった、とか。
少年ジャンプで女性主人公の漫画(『約束のネバーランド』『アクタージュact-age』)が人気を得る、とか。
ネット界隈ではフェミニストとか「me too運動」とかが話題になったり、逆にミソジニーなんて言葉が入ってきたりね。
そういう時代なんだね、とぼんやり眺めていました。ふーんって感じ。
ちょっとだけ触れるとするなら、漫画家を性別で分けて考えるのもナンセンスだな、と思ったくらい。
女性漫画家ならではの特徴めいたものはあると思うけど、それはそれだし。特徴というか、傾向みたいなもので、全員がそれに当てはまるわけでもないし。
高橋留美子先生大好きだし。荒川弘先生も、羽海野チカ先生も好き。
さてそんな時代なんですが、とうとう、と言うか、いよいよ、と言うか。この流れでこういう売り出し方される漫画が現れましたか、という感じのやつです。
今日は『さよならミニスカート』について。先日(11/22)1巻が発売されたところなのでちょっと書いてみます。
どんな漫画でどんなプロモーションをされたか
なにはなくとも概要から。
りぼんにて2018年8月から連載開始。作者は牧野あおい先生。
人気アイドルグループのメンバーだった主人公(神山 仁那)は、ある事件をきっかけに所属グループを脱退。過去を隠しながら高校生活を送る。事件のトラウマに苦しむ神山だが、光という男子クラスメイトとの交流が、彼女を少しずつ変えていく。
みたいな話。まあまあよくあるストーリーっぽいように見える。
公式で試し読みができるのでこちらもどうぞ。

そしてこの『さよならミニスカート』、公式サイトにもある通り、なんだかりぼん側からのプッシュが強い。
編集長が異例のコメント!なんて話題にもなってね。公式サイトに載ってるんで興味のある方は見てみてください。
それでこの漫画、りぼんだけじゃなく、ジャンプ+にも掲載してるってのがなかなか。実際俺はジャンプ+で知りましたし。
作品の扱っているテーマの関係上、男性にも読んでもらいたい、という事ですかね。
まあ、まんまと読んじゃってコミックス買って感想まで書いてるんでね、俺とか。良いプロモーションだったんじゃないですか。知らんけど。
男が読んでみてどう思うのよ
この漫画、どういう語られ方をしたいのかいまいちよくわからないんだけど、1つまず言えるのは、普通に面白い漫画だよね、という事。
俺は少女漫画を好んで読むわけじゃなくて、話題になったやつをちょろっとツマむ程度なんだけど、この漫画はまあまあ普通に楽しく読めました。
それなりに続きも気になります。
ただどうもテーマが先行しちゃってる感があって、そこに捉われてると何だかよくわからん漫画になっちゃいそうだなあ、と。手放しに「すげえ面白い!最高!」ってならないのはその辺も影響してるのかもしれない。
とりあえず難しい事考えずに、先入観抜きで読んでみるのがいいかも。
それでは、この漫画のテーマってなんじゃいという話。大体タイトルとかからお察しなんだけど。
ざっくり言っちゃうと「女性の生きづらさ」と「女性としての楽しさ」の兼ね合い、みたいなものでしょうか。
結構象徴的なシーンがこの辺。
さよならミニスカート 1巻 牧野あおい 集英社 より引用
同級生が変質者に太ももを触られる、という事件があって、男子が「短いスカートなんか履いてるからだろ。スカート履いてる女は男に媚びてんだよウヒヒ」みたいな事を言ってからの、これ。
世の男がみんなこんな事思ってるとは、思わないで欲しいのだけども。でもやっぱこういうのを見ると、ごめんなさいってなるな。
ここまで露骨じゃないにしても、やっぱ男ってこういうトコあるよね。多少なりとも。
そういった事の積み重ねが、女性を生きづらくしている原因の1つなんだろうから、男性はもうちょっと意識した方がいいですよね。はい。
的な事は、きっとこの漫画の本筋ではないと思った。それはそれとして、この漫画はただ男を叩きたい漫画じゃないんすよ。そこがとても良い。
女性が抱える女性としての問題、辛さ、みたいなものを、結構フラットに生々しく描こうとしてる。だから俺たち男も、冷静にそれを見られるし、理解できる。
その辺をもうちょっと見てみたい。
未玖というキャラがつらい
「敵」って言葉を使うと、無駄にヘイトを稼いでしまいそうだけど、他に言葉が思いつかない。ので、そのまま使っちゃうけど、この漫画で描く女性の敵は、多分同じ女性なんじゃねーのかな。
っていうのは、1巻時点で恐らく主人公神山さんと敵対するであろうポジションに置かれてる、未玖というキャラについてなんですよ。
前段に挙げたシーン、未玖はある意味この場面の原因、太ももを触られた被害者なんだけど。
このシーンの後、暴言を吐いた男子生徒に笑顔を向け、冗談めかしてたしなめる。そして心配する女子生徒たちには「みんな大げさっ!たかが太ももだよぉ!?」と笑い飛ばす。
それだけで済ませちゃう。
そしてまあなんだかんだあるのだけど、未玖が明確に敵意を向けるのは男子ではなく、神山さんなのだ。
主人公である神山さんは「女性らしさ」を遠ざけてる。一方未玖は「女性らしさ」全開、可愛い女の子であろうとする。
そして未玖の想い人は、神山さんにご執心。神山さんも彼に惹かれていく。対立待ったなし。
この漫画の本筋は、多分、神山さんのトラウマとの戦いで、彼女がどのように「自分なりの生き方」みたいなものを見つけるか、だと思う。
そのストーリーにおいて、未玖はどんな役割を果たすのか。どうやら敵役であるっぽいけど、どうなんだろう。ただの恋敵って事ならわかるけど、それだけで終わるものか。
神山さんのトラウマには、どうやら「女性らしさ」みたいなものが深く関わってるみたい。その「女性らしさ」に対して、主人公と正反対のスタンスを取る未玖。
であれば、この未玖というキャラクターが最終的にどこへ着陸するのかが重要になってきそうじゃないですか。
それで面白そうなのが、未玖がやってる戦いこそが、神山さんのそれよりも、より現実に近いように見えるところ。
未玖が纏ってる「可愛い女の子」というレッテル、「女性らしさ」って、未玖自身が演出して作り上げたものなんだよね。
その演出の結果、どんな事が起こったかは前述した通り。太もも触られて男子からは冷やかされる。
それでも未玖は笑って済ませる。そうするのが未玖の考える「可愛い女の子」だから。
いやこんなの傷付かないはずがないでしょ。クソしんどいと思うんだよ。
そんな未玖のクソしんどい日々の原因である「女性らしさ」を、神山さんは全て投げ捨ててるわけじゃない。それだけできっと目障りに違いないのに、そんなワケわからん女が何か最近調子づいてる。
イラッときますよそりゃ。神山さんのトラウマとか知らんし。
だからね、最終的に神山さんが未玖とどう折り合いを付けるのか。2人は分かり合えるのか、なんてトコがね、気になりますよ俺は。
なんか未玖の事ばかりになった
そんな未玖の事を考えていたら、そういえばこんなキャラ他の漫画でいたな、と思った。
『BEASTARS』のハルと『青のフラッグ』のマミだ。
いや、全然違うけどね。やってる事は。
ただ共通点があってこの人(ウサギ)たち、「女性として確固たるプライドがあって生きている」って感じするんだよ。
ただ、ハルとマミの場合は1ミリも男に媚びないんだけどね。
女性としての生きづらさを強く感じながら、女性らしさを決して諦めない、というか。『さよならミニスカート』でやろうとしてる事の、1つの答えの形が彼女たちの中に見られるかな、とか思いました。
以上です。ありがとうございました。
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