別に今年1年を振り返って、とかそういう感じじゃ全然ないんだけど、ふと漫画村の事を思い出した。
あの騒動、去年の夏頃から今年の春辺りだっただろうか。まだこのブログは立ち上げどころか構想すらなく、俺はTwitterなどで色んな人の意見をぼけっと眺めていた。
あ、一応書いておくけど、俺はあのサイト見に行ったこともないし、行く気もなかったです。そこそこ良い歳だし、明らかに違法らしきものに嬉々として手を出すのはすごく嫌だったから。
で、当時俺のTLでは「漫画村滅びろ。使ってる奴は犬畜生以下のクズ。漫画村を1秒見るたびに貴方の寿命が30年縮みます」みたいなツイートがほとんどだった。本当だったら日本の少子高齢化が光の速さで臨界点を突破しているよね。ヤバい。あと犬に失礼。
そんな過激派ひしめくTLだったんだけど、騒動が煮詰まってくるとこんな意見がよく見られた。
「漫画村は権利者に1円も支払われないので超ダメ。ちゃんとお金を払わないと漫画家さんは生活できなくなり、業界の縮小に直結します」みたいなやつ。結構あったよねこういうの。
これはとてもよくわかる話だなとは思うし、ある意味では正論だとも思う。
しかしどうも俺は、当時のあの雰囲気に一抹の気持ち悪さを感じていたのです。その気持ち悪さの正体はいまいち言語化できなかったし、ちゃんと発言できる場もなかった。腹の底に澱を呑んだまま日々を過ごしておったわけです。刹那で忘れちゃったけど。
で、さっき思い出したから書こうかなって思いましたー。いぇーい。それではどうぞ、お付き合い下さいませよ。
漫画村とは何だったのか~みんな知ってるやつ~
漫画村って何だったのか。誰もが知ってる、知らなくてもちょっと調べたらわかる事を書くよ。
漫画村は2016年に開設された、完全無料で数多くの漫画が読み放題できるサイト。
まさに真の嘘偽りない「無料読み放題」で、どれだけ読んでも「ここから先はポイント制になりますー」みたいな事はないやつだったらしいよ。受験生が漫画村を知ってしまって、朝まで漫画読みふけったヤバい、みたいなね。お前は『ドラゴン桜』を読め。いや、勉強しろか。
で、漫画村には一体どのくらいのタイトルがあったのか。これはちょっと調べてもわからなかったのだけど、当時噂で聞いた感じだと「(漫画村に)ない作品を探す方が大変」みたいな話だった。本当かね。
まあその話はちょっと眉唾だとしても、でも恐らく今あるような「定額制読み放題サイト」とは比較にならない豪華さだっただろうとは思う。
漫画村が問題にされたのは、これが出版社(などの権利関係者)とは全く無関係・無許可の運営だったという点。冒頭でも書いたけど、権利者に一切お金が支払われないっていうスタイルね。法律的にはかなり黒よりのグレー、らしいです。
法律まわりの話はあまり詳しくないので申し訳ないのだけども。ちょっと調べただけだと、どこがどう違法だったのか、はっきりすっきりわからなかった。海賊版だから取り締まれって事だったのかな。
いや海賊版とか普通に違法でしょ、ってのはそりゃそうなんだけど、漫画村のやり口はなかなか巧妙というか、ずる賢いというか。この辺の話は興味ある方はググって下さい。
で、そのアホみたいなネーミングとは裏腹に、アウトローの気配を濃厚に漂わせる漫画村。こいつが広く世の中に知れ渡りだしたのが、2017年の夏辺り。翌年2018年になると、批判的な論が色んな所で聞かれるようになり、2月には国会でも問題にされてた。
そして4月、なんやかんやでとうとう漫画村は閉鎖。正義は勝ったのだった。めでたしめでたし。
こんな感じで、話題になってから1年足らずであっさり閉鎖と相成ったわけだけども、果たしてこのサイト、業界にどんな影響を及ぼしたのだろうか。あんだけ話題になったんだから何か影響あったと思うでしょ。
ここで言う影響ってのは、漫画の売上的な意味ね。
これ、はっきり言って調べてみても全然わからない。売上は下がったのかも知れないし、大して変わらなかったのかも知れない。
この事については、『海猿』や『ブラックジャックによろしく』で有名な佐藤秀峰先生が興味深い記事を書いてらしたので紹介しときます。

乱暴に要約すると「漫画村が閉鎖された事で漫画の売上が増えたって言いたい人が多いけど、実際はよくわからん。ちゃんと色んな角度で情報見ましょうね」みたいな感じかしら。結局わからんのかーい。
まあでも「わからない」って事が面白いよね、という話なのよ。ええ。
っと。こんなところで漫画村についてのアウトラインはいいですかな。なんかいつにも増して文字ばっかりの記事になりそうで俺は、俺は。でもまだまだこのまま続くんじゃよ。
漫画村とは何だったのか~ぼくがかんがえたこと~
唐突に話を戻すんだけど、俺は漫画村について語ってる正義マンたちの話がなんとなく気に入らなかったんだ。
いわゆる「漫画を(違法に)無料で読むことで、漫画家に行くはずのお金がなくなり、漫画業界は衰退する」説ね。これって、嘘じゃないけど真実でもないと思いませんか。
- 漫画村ユーザーはその漫画を購買する意欲があり
- 漫画村を使用していなければその漫画を購買していたと期待され
- 漫画村を使用した事によりその漫画の購買を取り止めた
のであれば、「漫画家に行くはずのお金」が発生するけどさあ。どうなの?これについての1つの答えが前段で書いた「漫画村が漫画の売上に影響を及ぼしたかは、わからない」だと思うけどどうですか。
で、結局何が気に入らないんだって話ですけど。こういう仮定の話をあたかも真実かのように置き換えて、それを前提に正論っぽい事を言われると、コロっと行っちゃうよなあって話なんすよ。
あと、そもそも漫画村の話題で「漫画村ユーザー」に何かを期待したり働きかけようとするのも、違うんじゃないかと思ってたんだな。
漫画村の1番大きな、そして多分唯一の問題点は、「権利者にお金払ってない」って事でしょ。何で漫画村がダメなやつなのか、それは違法(っぽい)から、だけだと思うんですよ。
そこを糾弾するのは、とてもわかる話ですけどね。ってのが、俺があの騒動の中思っていたことでした。うわあ何かどうでもいい事を書いた気がするけど気にしないぞ。
漫画村騒動が終わって数ヶ月経った今
はい。それではここからが本題です。今までの事は全部忘れてくれて構わない。読んでくれた人はお時間を割いて頂き誠にお疲れ様でございました。
さて。漫画村騒動から8ヶ月ほど経った今。このご時世、8ヶ月なんて言ったら地球が太陽の周りを2、3周しててもおかしくない。超速い、時の流れ。怖い。
それだけ時間が経ったから、もうすっかりあの騒動の事なんか忘れ去ってしまって、残ったものと言えばちょっとした「漫画無料読み放題」へのアレルギーくらい。
あの頃漫画村で明け方まで漫画を読んでいた受験生は、無事に春を迎えられただろうか。あ、春も2、3回きてますからね。油断しないで。
あるデータによると2018年1月当時の漫画村、月間のアクセス数が9892万人とかあったんですって。かなりすごい数字だと思いますこれ。で、その9892万人は今、漫画を読んでいるのだろうか。
そして、彼らの漫画への接し方は、何か変化したんだろうか。
漫画村以前はお金を払って漫画を買っていたが、以降はお金を払うのが馬鹿らしくなり漫画を読むのをやめた。という人もいるかもしれない。もちろん逆パターンもあるかもしれない。
これらの数字を間接的にでも類推できるような情報は、今のところちょっと見当たらない。もしあったとしても、そこに説得力があるかというと、どうだろう。
結局、漫画村はあれだけの騒動になったけど、それによって漫画読者が何か変わったかと言うと「わからない」。その程度の影響しかなかったという事かも。いや、個人レベルでは色々あった方もいるかもしれませんけど。それこそ知りませんよそんなの。
それじゃあ漫画業界は、あの騒動から何か得たものはあったんだろうか。なかったんだろうか。
騒動が盛り上がっていた頃、ちょろっと目にした記憶があるんだけど、漫画村って相当儲かっていたらしいんですよ。
当然、具体的な確定した金額なんて全然わからないんだけど、試算した人によるとどうやら月に数千万とかいやいや1億を越えてるだとか。
(恐らく)小規模な運営による1サイトが、1ヶ月で稼ぐ金額としては、なんだか凄そうに感じる。でもこれそもそも漫画家に金払ってないし、違法らしいし。
それをなかった事にしたとして。日本中の人気漫画をかき集めて無料で公開して、この金額なんだよな。そう考えるとこれって、多いの少ないの。
これが「多い」のだったら、色んな可能性が広がりまくっただろうけど。多分そうじゃなかったんだろうね。
漫画村は違法らしきものだしそもそも倫理的に褒められたものでは決してなかった。そういうものを取り上げて、軽々しくこういう事を言ってはいけないのだろうけども。漫画村をある種「実験」として捉えたら、あれってそれなりの結果を出したんじゃないすか。
- ロクに広告・宣伝を打たず
- 違法の匂いでむせ返りそうな環境下で
日本中の人気漫画を無料で読み放題にしたら、月にこのくらい稼げますよ。というモデル。
これを下敷きにすれば、クリーンな漫画村を作った時どうなるのか、ヒントになりそうな気がするんだけど。もう頭の良い人たちは計算してるのかな。
そんでこれからどうすんのって話よ
出版業界が斜陽産業で、紙媒体の本は雑誌も書籍もいずれ死ぬ、ってのはもう何か抗えない未来だと思う。遅かれ早かれ的な。
希望の光は電子書籍で、こいつがどこまで伸びていくのか。そして、電子が成長する事で業界の形はどう変化していくのか。既に色んな変化の兆候みたいなものは、あるよね。
例えば電子書籍と近い流れにいながら、明らかに別の潮流としてある、漫画アプリ。マンガONEとかジャンプ+とか。これらは基本無料ってのが特徴、ただし読み放題ではない。
それから徐々に始まってる漫画のサブスクリプション化。これはいわゆる「定額読み放題サービス」ってやつ。
コミックシーモアなんかが有名どころですか。あとは講談社がやってるコミックDAYS。これは雑誌を読み放題にしちゃったのがすごい。

こういった新しいサービスが、これからの漫画を救うきっかけになるかもしれない。そしてこれらを一斉に淘汰するとんでもないサービスがまだまだ現れるかもしれない。それはもう、どこかで準備が始まってるのかもしれない。かもしれない。
なんか漫画無料読み放題時代は、思ったより遠くない気がしてきた。反面、この宇宙が終わるまで実現されない可能性もある。ただ1つ結構確率の高い話として、今は業界の過渡期真っ只中なんじゃねーかっていうね。
その中で俺たちは、単なる1消費者にすぎない。でもこれからの変化に対して、みんな投票権を持ってるんだと思う。
アンチ電子で紙にこだわり続けるのも全然アリだし、アプリの無料分だけ読んで自分の金は1円も使わないスタイルだって良い。
漫画との付き合い方が、色々選べる時代になりつつあって、それってつまり俺たちは選ばなきゃいけないんだよな。
漫画村の時に感じた事や気付いた事が、これからの時代の1消費者として、活きた選択に繋がっていけば、いいですよね。
あ、なんかうまい事まとまったのでは!どうですかこれ!
それでは以上になります。文字ばっかりでかたじけない。ありがとうございました。
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