漫画を読んでいると、色々な感想がある。
面白い、笑える、悲しい、共感できる、などなど。もちろん、これらの逆の感情も生まれたりする。
これらの感想・感情で、特にポジティブな方向に「すごい」ってなったものが感動と言うのだろうなと思う。
で、今回紹介する漫画は俺にとって、面白いとか楽しいみたいな気持ちじゃなく、シンプルに「好き」って作品です。
作品っていうか、作家さんを紹介みたいな感じになると思う。香山哲先生という作家です。
正直全然詳しくないんですけど、絵の事とか
香山哲先生について。
1982年生まれ。漫画以外にも、ゲームを作ったり、イラストレーターをやっていたりするみたい。現在(2018年)ベルリン在住。
恐らく商業誌での連載はないんじゃないかな。インディーズでの活動を主にしていた方みたい。
82年生まれって事で、同じ年生まれってのが凄い親近感なんすよね。でもこれは俺にとっての事なので、どうでもいいです。
「人」について書くのってあんまり趣味じゃないから、紹介はこのくらいでいいか。
今回は「作家さんの紹介記事かも」とか言ってたけど。知らんよ。
さっさと漫画の事を紹介したい!させて欲しい!
えっと、コンビニで買える雑誌なんかで読める漫画家さんではないのですが、つい最近、幸運にも彼の漫画を読む機会を得たのです。
これこれ、e-bookJAPANの無料連載漫画。
パッと見で、絵の雰囲気がすごく好きだなと思ったんすよ。とは言え、万人にオススメできる感じじゃないのはわかる。
この雰囲気、好きな人はすごく好きだけど、そうでもない人は全然興味そそられないやつだよね。そそられないどころか「絵が嫌いだから読まない」まである。
わかりますけど、その手の人の事は一切考えないで書きます。グッバイ!
で、俺はこの絵が好きだよという話。
なんだろう、ちょっと日本の漫画にはあまりない感じだよね。でも子どもの頃にどこかで見たような、懐かしい気持ちがすごくある。なんだろうこれは。
絶対どこかでこんな感じの絵を見た記憶がある、と思って色々考えたのだけど、自分で納得できる答えが見つからなかった。
例えば、水木しげると藤子不二雄Aを足して2で割ってシンプソンズにした感じ、とか。ぐにゃぐにゃにこねくり回してみたんだけど。なんか違うよね。当たり前か。
まあとにかくオリジナリティがすごいよ、っと。怪しい雰囲気を持ってるんだけど、なぜかちょっと優しみを感じる絵柄、みたいな。クセになるっていうかな。
こんなのもう説明するの難しいよ。1回漫画読んでみてすぐ読めるから。
はい、公式サイトこちらです。たくさん読めるけど、出来たらちょっと読んでこっち帰ってきて。おねがい。
あの、最初に紹介した、『ベルリンうわの空』も全然最高なんだけど、これ文字が全部写植されてるんだよな。
この方の他の漫画、公式サイトにあるやつは、セリフもモノローグも全部レタリングされてるのよ。それがとてもいい味出してる。なんで『ベルリンうわの空』だけ写植されてるんだろうね。不思議。
そうは言っても多くの人は見に行かないだろうから
ああ好きだな。ってなったコマがいくつかあるんだけどその1つをご紹介。
『ビルドの説』香山哲 より引用
香山哲先生の漫画は、ルポ漫画的なものが多くて、この『ビルドの説』もその一つだと思う。ざっくり言うと「生きやすいように生きよう。その為の努力はしよう」みたいな漫画。
このページの「きみは仲間だ!」からの「だが別に敵はいない」の流れが最高に好きなんすよ。このメンタルが何だかとても安心する。
ルポ漫画が多いから、多くの漫画で香山先生自身がキャラクターとして登場する、というか「主人公・香山哲」なんだけども。この漫画で1コマ目から喋ってる顔のとがったキャラね。
香山先生の「僕はこう思います」っていう、ナントカ論の展開が結構漫画のメインになってるんすよ。その論の雰囲気が大体「だが敵はいない」みたいな、なんというか、攻撃的ではないやつなので、とても心地いいんだよね。
お説教みたいなものでもないし。素直に「なるほどそういう考えもあるね」って感じるやつが多いんじゃないかな。賛成でも反対でもなく、そういうのもあるね、って思えるやつ。
俺なんかは大体「俺もすごくそう思います!」ってなっちゃうけど。まあその辺はどうでもいい。
で、このページ見てもらってわかるように、デザインがすごく独特。前段でも書きましたが。
主人公以外のキャラクターはほとんど全てクリーチャーみたいなデザインだね。ページ下半分に描いてあるやつらの雰囲気。でもこいつらはまだ「わかる」デザインの方だと思う。もっと「どっから出てきたの?」っていう不思議なキャラクターがいっぱい出てくるよ。
あ、主人公も、他のキャラと比べると人間に近いけど、顔とがってるし4本指だから、多分人間ではないデザインなんだろうけどね。
でですね。この「どっから出てきたの?」っていうキャラクターが、ほとんど全然重要なキャラクターとかではなくて、普通に街を歩いているだけの人物なんかがそんな風に描かれててるんだ。それがとても面白い。
舞台はれっきとした地球の実在する都市なのよ。だから本当はきっと、みんな普通の人間のはずなんだ。なのに、みょうちくりんなクリーチャーとして描かれてる。自分自身もクリーチャーとして描いちゃう。
そして漫画の内容はとても地味、というか、香山哲氏が「こんな事を考えて生きているよ」ってものを、面白おかしく描いているだけ。大事件とか起こらない。
この不思議バランスが、すごく気持ち良いんだよなあ。
日常を、非日常で描いていて、その非日常性が何故かとても懐かしく感じるの。この気持ち悪い心地良さを、どうかわかってほしい。わからなければ、別にいいですけど。
あと『香山哲のファウスト』が滅茶苦茶好き
ルポ漫画が多いよーと書きました。今まで紹介した『ベルリンうわの空』も『ビルドの説』もルポ漫画。他に自身の個展にまつわる『水銀柱』とかポーランド辺りの旅行記『心のクウェート』とかね。
どれも面白いです。全部好き。
でも俺が1番好きだなって思ったのが『香山哲のファウスト』なんすよ。これはルポ漫画じゃないです。主人公・香山哲じゃないやつ。
どんな漫画なのか、説明するのが非常に難しいのだけども、大体こんな感じ。
主人公・中道シーゲルは鬱屈した毎日を送る24歳。彼には彼自身も気付いていない、そして日常生活には何の役にも立たない才能「懐力(ノスタルヂカラ)」があった。
その才能に着目した天使メフィストフェレスは、中道を統治者にした新世界を作る。中道はその世界で小学3年生になり、何不自由ない暮らしを送るのだが
みたいなやつ。この新世界っていうのが、80年代の日本の雰囲気で、我々世代にドストライク。
この漫画、タイトル通り「ゲーテのファウスト」が下敷きになってるんだと思う。なので、中道がこれからどうなるのか何となく想像できそうなんだけど、まあ今のとこ何とも言えない。
あとメフィストが『香山哲の~』では真面目で勤勉な天使なのもちょっと面白いかな。果たして中道はメフィストの言いなりになっていていいのやら、とか。
で、この『香山哲のファウスト』、ちゃんとストーリーのある漫画なんだけど、作者の「僕はこう思います」論が端々に出てくるんだ。『ビルドの論』とかみたいに、はっきりとキャラに喋らせてるわけじゃないんだけどね。
その「論」が、ルポ漫画とはちょっと雰囲気が違って、哲学的というか、そんな感じ。
でも哲学的とか言われちゃう作品って、他人から詳しく説明されると物凄くつまらなそうに見えるよね。だからあんまり書くのやめます。なんだっての。一体。
この漫画も公式サイトで読めるので是非。ああでも1巻分までで連載は止まってるみたいだけど。自主休載中との事。
どうもスマホアプリで連載してたらしいけど、今はそのアプリがDLできないっぽい様子(app storeで検索したら出てこなかった)。
どうか無理のない範囲で、いつか続きが読めるようになったらいいなと思ってます。はい。
1巻までで十分に面白いのでね、みなさん是非。
それではこんな感じで。香山哲先生のご紹介おわりです。
久しぶりに「好きだなあ」って思える漫画作品に出会えて嬉しかった、という記事でした。
ありがとうございました。
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