このマンガがすごい!2019が発表され、にぎわってますね。年末という感じで大変よろしいですな。

このマンって、割と「ちゃんと面白い漫画が選ばれる」と思ってます。良い賞ですよね。人によって様々な意見はあるでしょうけど。
ただ今回オトコ編1位を受賞された『天国大魔境』については、俺もほんの少しだけ「どうかな」とは思いました。
作者の石黒正数先生もインタビューで「まだすごくない。1巻しか出てないし。すごいトコまでいってない」と仰っていて、確かにそうだよな、という感じ。
そんで、オンナ編の1位『メタモルフォーゼの縁側』。今回の受賞をきっかけに2巻まで買って読んだけど、とても面白かった。人付き合いが苦手な女子高生と、さっぱりした性格のおばあちゃんが、BLを通じて仲良くなるって漫画なんだけどさ。
「人付き合いが苦手な女子高生」も「さっぱりした性格のおばあちゃん」も、その属性だけで好きってなるよな。キャラの特徴だけで既に面白そう。
でもこの漫画、2人をつなぐきっかけがBLという事で、もしかしたら読むのをためらう男性もいるかもしれないなっと。なんかそれって、ちょっともったいない。
オンナ編の漫画だけど、男性にも絶対おすすめできるやつなので、是非。
はい、というわけで、今日は腐女子の話をします。やったーなんて自然な流れ。ありがとう鶴谷先生。
ええ、やっぱね、男性漫画ファンの中には「腐女子苦手」空気がいまだに根強くあると思う。苦手どころじゃないな。アンチ腐女子まである。
この風潮って多分15年くらい前がピークで、そっから現在に至るまで随分マイルドになってきたとは思う。
最近では「腐男子」とかいう言葉もあったりしてね。何かもう色々すげえな人類。
ただそれでもやはり、「腐女子」もしくは「BL」というジャンルに強い嫌悪感を示す男性は多い。それは当然わかる話ですけど。
で、それはちょっと勿体ないんじゃないかな、と思ったのです。『メタモルフォーゼの縁側』があるから、だけの話ではなくてね。
我々男性漫画ファンは、腐女子の事をただ闇雲に毛嫌いするのではなく、もうちょっとこう、知ってみませんか、って感じ。腐女子の人たち、面白いから。
男性からも腐女子の方々からも「大きなお世話」と言われる事必至の記事になりそう。うるせえな勝手にするんだよ俺は。
よし。それでは、誰も得しない俺が1番損するタイプの記事、始めます。
腐女子とはなんぞや
さて。我々は簡単に何気なく「腐女子」という言葉を使っておりますが、そもそも「腐女子」とは何なのか。
結構この言葉の持つ意味って、広くなっちゃってる気がするんすよ。
なので、何の定義付けもなく「腐女子が~」なんて書いてると、まあ色んな齟齬が出ちまうだろうな、と。
というわけで、最初にキチンと、この記事における「腐女子」を定義しておきます。
今回、この記事において語る「腐女子」とは
「少年漫画を主戦場として、BLを愛好する女性漫画ファン」の事とします。
漫画よりもアニメ・ゲームがメインである、とか、BLにはまだ手を出していない、とかの女性オタクは今回完全に無視。
特に、BL好きではない女性オタクについては、それそもそも腐女子と呼ばないのでは問題があるけど、その辺の話はややこしくなる気がするので割愛。
で、なんでわざわざ少年漫画ファンに限定したかと言うと。
少年漫画って、メインターゲットはあくまで少年なんすよ、当たり前だけど。いや、中には腐女子ウケを意識してる少年漫画も、あるけどね。
でもそういう漫画だって、ちゃんと「少年が読んで面白い」チューニングはされてる。それが上手くいってるかどうかは、まあタイトル毎に色々あるでしょうけど。そこまで知らんわ。
それで、これがアニメとかゲームだと、最初から「腐女子向け」ってのがあるじゃないすか。今回はそこ除外しとかないと、何だかわけわからん話になりそうなので、という事情でした。
そして、いつもの事なんですけど、この記事で書かれてる事は全部俺個人の意見なので、腐女子の方が全員こうだ!と決め付けるものではない、という事も断っておきます。
こんなにやたらと前置くのは、ビビってるからだよ。ごめんよ。なら書かなきゃいいのにね、ほんとにね。
男性漫画ファンと腐女子の違い
はい。では次に我々の話。男性漫画ファンについて。
ここ数年で色んな事情が変わっていって、なんでもかんでも「多様化」を認めていこうねという流れですが、そうは言っても「BLキツイっす」というのが多くの男性の意見でしょう。
そりゃそうだよ!
ここをどうこう言うつもりは毛頭ないです。今回の記事の趣旨はそこじゃないんすよ。
なので、今この記事を読んでくださっている男性漫画ファンで「BL無理」な人も、一旦それは置いといて下さると嬉しい。
腐女子とBLは切っても切れない関係だけども(と言うかそう定義付けたのだけども)、BLという文化が育んだ、腐女子独特の感性があるので、そこを云々かんぬん。
はいそれではね、我々男性漫画ファンと腐女子の決定的な違いを挙げていこうと思います。違うというのは面白いという事ですぞ。
我々と腐女子の違い、そりゃもうズバリ「感情移入の有無」これに尽きる。作品への接し方がそもそも全然違う。おどろく。
腐女子は基本的に、登場人物に感情移入しない、と考えていいです。女性キャラに自分を投影したりもしない。
もしそういう事をする女性がいたら、それはただの女性漫画ファンなんだと思う。もしくは、腐女子でありながら、女性漫画ファンとしてその作品に触れているのに過ぎない。
この「腐女子視点」と「漫画ファン視点」が同時に存在するか否かは、人それぞれ様々だと思う。完全に「腐女子視点」のみで漫画に触れてる方もそれなりにいらっしゃるでしょう、きっと。
で、この腐女子視点、つまり、漫画に一切感情移入しないで接するやつ、楽しいの?って思うよね。俺たちからしたら、ちょっと理解しづらい感じ。
これはきっと、我々の立場から言えば「楽しくない」に違いない。しかし、そもそも腐女子の方々はそこに楽しさを求めていないと思うんだ。彼女たちの漫画の楽しみ方はその1歩先にあるんじゃないかな、と。
ちょっと話を戻して、なぜ腐女子は感情移入をしないのか、について。
感情移入とは、簡単に言えば、その物語世界に自分を没入させる事だよね。で、これって腐女子にとっては、はっきり言って邪魔というか、枷にしかならない読み方なんだと思うんだ。
腐女子の少年漫画の読み方は、ほとんど歴史学者みたいなものだから。
漫画は創作物だし、程度の差はあれ大抵どれもファンタジーなんだけど、腐女子にとっての少年漫画は全然ファンタジーじゃない。彼女たちの本当のファンタジーはBL世界にあるんだと思う。
つまり、腐女子にとっての少年漫画(のストーリー)ってのは、彼女たちがファンタジー世界を作り上げるための「史実」みたいなものではないか、と考えるわけです。
俺たちは少年漫画をストレートにファンタジーだと思って接するから、感情移入する。腐女子はしない。それは彼女たち(の推しキャラ)にとって史実であり歴史であるから。少年漫画は腐女子にとって、歴史書です。という話でした。
天地を喰らう腐女子たち
それでは腐女子の作るファンタジーについて。
漫画は史実、彼女たちのファンタジーはBLという話をしました。
そもそも少年漫画って少年をターゲットにしてるんだから、公式で公認のBLなんてほとんど出てこないよね。
だから、腐女子がBLやりたいと思ったら絶対ファンタジーになる。絶対に、公式設定を無視したものになるんだよ。
これが女性の強さであり、面白さだなと俺は思ったわけです。
男って、結構つじつま合わせたくなるトコあるじゃないすか。時系列とか、能力の矛盾とか、そういうの突っ込むのって凄く男性的だなと思うんすよ。
腐女子はそういうの全部無視できる。自分のファンタジーを実現する為なら、キャラの1人や2人、平気でなかった事にする。
その発想の自由さって、めちゃくちゃ面白くて、昨今の女性漫画家の活躍もこういうトコから来てるんじゃないかって思う。
よく「漫画はキャラクターが命」とか言われるけど、キャラに深い愛情を注ぐのは、男性より女性の方が得意な気がするんだよな。男は若干ストーリー重視になる気がする。
そういうわけで、腐女子のキャラクター愛、自由な発想、つじつまを合わせない勇気、ってのは、我々男性漫画ファンからしたら非常に面白い要素なのではないでしょうか、という話でした。
いやいや待て待て、腐女子は歴史学者とか言ってたじゃん、だったら史実無視しちゃダメでしょ、とお思いですか。
浅 薄 !
まーだそんなものに縛られますか。歴史はあくまで歴史。それはそれで尊重されるべきだけど、腐女子が作っているのはファンタジーだからね。
そう。彼女たちが作っているのは歴史ファンタジーなんすよ。『天地を喰らう』みたいな。
あの名作『天地を喰らう』をご存知ない若年層の為にWikipedia先生のお力を借りよう。ほれ。
人間の住む世界の他に天界・魔界・地獄界が存在するという伝奇的要素のある作品となっている。この点では『水滸伝』や『西遊記』、『封神演義』に近い。
天界を率いる竜王の娘が若返るための儀式として、地上の人間と定期的に交わっている。交わった男は何でも望みを叶えることができる。それによって曹操は天下を、孔明は知識を、劉備は肝っ玉を得る。なお、曹操と劉備は同一の竜神…竜王の娘・嵐(らん)と交わったが、実は劉備は天女とは交わっていなかった。
劉備が退治した黄巾賊首領張角の正体は「魔界の王」幻鐘(げんしょう)大王であり、その死体を108に分割したものが108の魔星となり、108人に降り戦乱の元凶となる。劉備・曹操にも落ち、劉備以外は魔性の虜になる。
天界の竜王をも従える「全宇宙の支配者」王皇大帝が戦乱に明け暮れる人類に怒り抹殺を宣言するが、竜王の懇願で劉備の働きを条件として保留され、嵐からその取り決めを知らされた劉備が物事の森羅万象を収め天下を統一する聖天子たるを宣言するための儀式「封禅の儀」に臨むところで終了する。
Wikipedia 天地を喰らう より引用
本宮ひろ志先生の名作『天地を喰らう』の概要がこれだ。簡単に言うと、三国志を元ネタにしたファンタジー漫画ね。
どうですか。あの本宮ひろ志先生がここまでやっているのだから、腐女子の作るファンタジーなんか可愛いもんでしょう。
もうね、世の腐女子は全員、本宮ひろ志フォロワーという事で間違いないですね。よし、まとまった。よかったよかった。
そうは言ってもやっぱりBLはキツイ
最後にやっぱりBLについても少しだけ触れておこうかな、っと。
お前ら男だってBL全然楽しめるはずだよとりあえず騙されたと思って読んでみようよきっと楽しいよ。
とは全然思わないし、絶対そんなわけないんですよ。中には楽しめる人もいるでしょうが、決して多数派ではないと思う。
これはこれ、1つの性癖みたいなものだし、多様性を認める世の中だし、というのはみんな承知の話だよね。
ただ、例えば自分の好きなキャラでBLをされるのがどうしても許せない、という人はきっといると思う。その気持ちはわからなくもないんだ。不意に想像してしまったりしてね。
そういう事に人一倍敏感になって、なるべく内輪だけで楽しもう、としていたのが、俺の知ってる腐女子のみなさんです。不快に思う人がいる事を、とてもよくわかっているから。
それはとても理性的な事で、お互いにとって良い距離感だな、と思う。ただ腐女子を含むオタク界隈の空気感がここ数年で大きく変わってきているのも事実。
彼女がBL好きでも全然気にしない、という男性もかなり増えたと思う。
だからと言って「オラオラお前らBL読めよ」ではないよな、ってのは上に書いた通りだけど。
結局この記事で言いたかった事は「BL憎しで腐女子を遠ざけるのは良くない。多様化が進む時代だからこそ、お互いにとって良い距離感を探ろうぜ」的なトコでした。
良識のある腐女子の方々は、ずっと我々と一定の距離を取ってきた。ここらでちょっとばかし我々から寄り添う事はできないだろうか。みたいな。わあ偉そう!ごめん!
そんなところで、またしても文字だらけの記事になりました。反省。
以上です。ありがとうございました。
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